※大力男(上漆原)
田辺城を築城する時のお話です。
お城の石垣に使うたくさんの石を運ぶために、田辺城下から人夫を出すようにと、上漆原の村にも16人の人夫が割り当てられました。
さっそく村では寄り合いが開かれましたが、その頃の上漆原の村には家数が少なく、16人の人夫を出す事はできませんでした。
庄屋さんを囲んであれやこれやと相談したものの、よい案が浮かびません。
「どうしたもんかのぅ?」
庄屋さんも村の人たちもどうして良いのかわからず、みな黙りこくってしまいました。
その時、寄り合いの隅で何やら相談していた2人が声をあげました。
「人数が少なくても、村に割り当てられた仕事さえ片付ければよいんじゃろ?」
「わしら2人で片付けるからまかせてくれ。」
円性と長左衛門という2人の男がそう言いました。
この2人はそろいもそろった無類の力持ちで、十貫匁(約37.5キロ)以上の重い石でもマリのように放り投げる力があったといいます。
2人は村の割り当ての16人分の仕事をするため、朝早くから出て城の普請場(ふしんば)に向かいました。
到着そうそう普請場では人数調べが行われました。上漆原以外の村からは割り当て通りの人数が揃っているのに上漆原からは2人だけです。
困り顔の役人に対し、「わしらは2人だけやけど割り当てられた人数分の仕事はやるから文句はないやろ?」と2人は言い放ちました。
大きく重たい石を運ぶには、石を括り付けた長い棒を前と後ろに16人づつで担ぎます。
お役人は言いました。
「それなら先棒は16人、後棒は2人で担いで大きな石を運べ。」
先棒は上漆原以外の村から来たよりすぐりの16人、後棒は円性と長左衛門の2人だけ。
いざ歩き出すと、先棒の16人はふらふらのろのろ。
力の余った2人は、そんな先棒にいらいらし、かついでいた棒をゆらゆらと振り動かすと、先棒の16人はたまらずバタバタと倒れる始末。
やっと最初の石を運び終えたら、元の場所に戻って次は2個目の石を運びますが、後棒の円性と長左衛門は再び某をゆらゆら揺らし、先棒の16人はたまらずバタバタ。
3・4個の石を運び終えた時、その様子を見て驚いた役人は「上漆原の人夫。その方たちの仕事はあっぱれである。もう帰ってよいぞ。」と早々に暇を出して帰らせたそうです。
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