洞窟の蛇(どうくつのへび)(下福井)
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舞鶴の伝説


■ 洞窟の蛇(どうくつのへび)(下福井) ■
※洞窟の蛇(どうくつのへび)(下福井)

 西舞鶴の港から眺めると山頂が平らで左右になだらかな裾を引いている美しい山が見えます。それが丹後富士とも呼ばれる建部山です。
標高は315mほどの山ですが、室町時代には一色氏が築城した建部城が頂上にありました。

建部山

 建部山の中腹ほどに屏風岩(びょうぶいわ)というそそり立った岩があり、その岩の下のあたりにある洞窟に誰かが住んでいました。

 ある日のことです。村の若者が樒(シキビ)を採るために建部山に登っておりました。
屏風岩の辺りでは蛇が時々出てきます。3〜4匹の紅色とねずみ色の縞模様の可愛いしぐさの蛇を若者はジッと見ていました。
じゃれているようにも見えた数匹の蛇は、クネクネと身体くねらせながら屏風岩の方に消えていきました。
若者は再び樒を採って籠に入れておりましたが腰が痛くなったので、体を起こして背伸びをした時、誰かの視線を感じました。

 辺りを見回すと、屏風岩の陰から髪の綺麗な美しい女性がこちらをじっと見ています。
紅の着物を着ているその女性は、この辺りでは見かけた事が無い程、それはそれは美しい女性でした。
若者は女性が立っている屏風岩の方にゆっくりと登って行きました。
その女性は若者の方を見つめながら、にっこりとほほ笑み、屏風岩の下の洞窟の中に入って行きました。

 若者は見失わないようにと急いで洞窟の方に登って行きました。
洞窟の中を見ると、中は真っ暗で人が居る気配もないので気持ち悪くなり、樒(しきび)を入れたかごを背負って家に帰りました。

 あくる日、屏風岩の辺りで美しい女性を見た事を村の人に話しましたが誰も信じてくれません。
若者は気になっていましたが、畑仕事が忙しくて山に行く時間が取れなかったため、美しい髪をした女性の姿を思いながら何度も屏風岩の方を眺めていました。

 しばらくして、屏風岩の洞窟に誰かが住んでいるという噂が広がりました。しかし美しい女性の姿を見ただけでなく、大男の姿を見た者や白髪の老人が洞窟に入るのを見たという者も居て、見る人によって違ったのです。
若者は気になって夜もろくに眠れなくなっていました。

 西の空が夕焼け色に染まるころ、若者は建部山に行き、樒を採ってた場所に行ってみると、蛇が三匹ほどたわむれていました。
しばらくすると、その三匹ほどの蛇は屏風岩の方に向かったので若者も蛇の後を追いました。

 蛇は屏風岩の洞窟の中に入って行ったので洞窟の中を覗いてみると、暗い洞窟の中に小さな灯りがいくつも光っているのが見えました。
若者は勇気を奮い立たせて中に入りました。
すると光はだんだんと奥の方に入って行くので、若者も光を追いかけて入って行きました。
洞窟の中の穴は奥へ奥へと続いています。穴は何度も曲がりくねり、天井からはしずくが落ち、足元には水溜りのようになっている。
若者は光を追いかけずんずんと奥に入って行きました。

 村人たちは、若者が山に登って行くのを見たものはあったが、その後、若者の姿を見かけたものは居ませんでした。
しかし、芝刈りや樒採りに山に入った人の話では、屏風岩の下の洞窟から3メートルもあるような大きな蛇が二匹、体をくねらせながら仲良く引っ付いて出て来るのを見たという人がいました。
その蛇は、1匹が黒じまの蛇で、もう1匹は紅じまの蛇だったそうな。

 それいらい、あの洞窟に入ったら蛇になるといって近づくものはなかったそうです。

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