■蛇切岩伝説
むかしむかしのお話です。
祖母谷通りを奥に入った所にある多門院黒部という所に、美しい姉妹が住んでいました。
この姉妹は、18歳の姉の「おまつ」、15歳の妹の「おしも」と言いました。
働き者の二人は多門院から与保呂へと毎日のように草刈りに出かけ、池のほとりで一服します。
ある日、一服している時に出会った美しい顔立ちの若衆に「おまつ」はひとめ惚れ。
何時も姉妹の二人で出かけていましたが、ソレからは一人で出かけては若者と池のほとりで話をするようになりました。
そして二人は結婚の約束をするまでになりました。
しかし、その時には既に父親が決めた縁談の話が「おまつ」にありました。
ここのところ、何時も一人で出かけていた「おまつ」でしたが、久しぶりに妹の「おしも」と一緒に出かけた時、池のほとりでサッと身を隠す若衆を見た「おしも」はすべてを察します。
「妹に知られてしまっては家には帰れない。」
そういって妹だけを家に帰そうとしますが妹の「おしも」は帰りません。
姉妹で着物の袖を引っ張り合っている時に、姉の「おまつ」が池にザブーン。
その途端、晴れていた空が曇りだしカミナリと共に凄い雨が降り出しました。
そして静かだった池には波が立ち始め水面が盛り上がったと思った瞬間、大蛇が姿をあらわしました。
大蛇は妹の「おしも」を少しの間見つめた後、姿を消してしまいました。
妹の「おしも」はいまの出来事に驚き、急いで家に帰って一部始終を父親に報告し、驚いた父親は池まで駆けつけて「おまつ」のお名前を呼びつづけました。
その時、再び池の水面が盛り上がり、大蛇が姿をあらわしました。
大蛇は悲しそうな目をして父親を見つめていましたが、再び姿を消してしまいました。
それから何日かたった頃、与保呂の村が大蛇によって次々と被害を受けるという噂が広まり、与保呂の村では大蛇の退治をする事を決めました。
モグサを牛の形に堅めて大蛇に食べさせれば良いという村の若者が考えた方法で、モグサの一部に火を付け池に投げ込みました。
大蛇は見事に本物の牛だと勘違いをして食べてしまいましたが、お腹の中でモグサが燃え続けるものですから苦しんで暴れます。
その時、空は急に曇って大雨が降りだし池の水は増えて川へと洪水のように溢れ出しました。
苦しみもがいていた大蛇も、池から溢れ出た洪水に流されて大きな岩に体をぶつけた時に、大蛇の体が三つに切れてしまいました。
その岩が【蛇切岩(じゃきりいわ)】です。
その様子を見ていた村の人々は、「おまつ」の化身である大蛇の祟りを恐れ、胴体を三つの神社に分けて祀る事にしたそうです。
●大蛇の頭部 日尾池姫神社
●大蛇の胴体 堂田神社
●大蛇の尻尾 弥加宜(みかげ)神社 (通称大森神社)
現在も、この三つの神社では、おまつの因縁なのか松の木は一本も育たないそうです。
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